【ノート】

哲学の文章という気がしない、文章の気持ちよさ。

一つ一つの言葉を誘惑しそれを「征服」―性的な意味で―するようにして語り続ける、「わたし」は、同時に、言葉によって絶えず誘惑されそれに「征服」され続けるのだが、そうした相互交渉を通じて「わたし」が「わたし」の外へ溢れ出し、しかし「わたし」ならざるものへとついに脱皮しつくまでには決して至らず、決定的な臨界点の手前で曖昧にたゆたっているとき、「わたし」の唇から洩れる言葉の連なりもまた、よそよそしさを徐々に放棄し「わたし」に対して濃厚な媚態を示しはじめる。

官能の哲学 (双書現代の哲学)

官能の哲学 (双書現代の哲学)