ひとりであること

 自分が所属している組織、集団への違和感。その違和感というものは、その集団のもっている空気であったり、質であったりする。
 人は常に不満を抱くものといってしまえば、そうだろう。けれども、明らかに集団の質が低下している、空気が緩慢たるものへと変わり、緩さをもち、自省がきかない、組織となったとき、そこにいる自分はおきばのない虚しさへと変わる。
 結局、それはひとりであることでしか、自分を保つことができない。自分の共感できる人物と交わるしかない。
 思うに、結局、その集団の質というのは、やはり年配者やベテランがどういう立ち位置でいるのかが大きいと思うようになってきた。そこに、厳しさがあれば、結局それを見て私たち若手は厳しさを知る。そして、そのベテランが力があれば、あるほどそのあり方というのが問われる。
 そんなの知ったことではないというのは、それまで。けれども、それが明らかに影響力があるということを自覚するかどうか、そこに人間性というものがあるのかもしれない。
 やさしさは武器かもしれない。それは、時には人を救うし、それが人をつぶすうことにもなる。やさしさを振る舞う人間は、それが何をもたらすのかを自覚することが大切な気がする。
 やさしさ、仲の良さによってもたらす怠惰。その怠惰に対して、自分をどう保つのか、それがいまの自分の課題であり、そこでどう振る舞うかが、自分という人間のあり方のような気がする。
 

 ぼくはでてゆく
 冬の圧力の真むこうへ
 ひとりっきりで耐えられないから
 たくさんのひとと手をつなぐというのは嘘だから
 ひとりっきりで抗争できないから
 たくさんのひとと手をつなぐというのは卑怯だから
 ぼくはでてゆく
 すべての時刻がむこうがわに加担しても
 ぼくたちがしはらったものを
 ずっと以前のぶんまでとりかえすために
 すでにいらなくなったものにそれを思いしらせるために
 ちいさな優し群よ
 みんなは思い出のひとつひとつだ
 ぼくはでてゆく嫌悪のひとつひとつに出遭うために*1

吉本隆明詩集 (現代詩文庫 第 1期8)

吉本隆明詩集 (現代詩文庫 第 1期8)

*1: ちいさな群への挨拶『吉本隆明詩集』1968思潮社p45.