ひと息つく。

 こころが折れる、そんなこと自分は無縁だと思っていた。折れることなんてないと思っていた。自分は強く在れる思っていた。
 だが、そんな強くはなかった。
 こころは折れなかった。が、あまりにもしんどかった。動くことさえ、面倒になり、ただごろごろとしていた。やるべきことはあふれている。しかし、それに向かうだけの気力がわかない。
 もう、情熱も才能も、いやむしろ、自分を支えていた情熱が枯れ果てたのかもしれない。情熱が失われていく。何に、自分を燃やすべきか。するべきことはあるのだが、それに自分が向かっていかない。
 ただ、漫然と寝ていたかった。ゆっくりしたかった。こころを落ち着けたかった。
 それをひとは病んでいるというのかもしれないし、それは逃げだというのかもしれない。
 たしかに、ぼくは逃げた。逃げて、ひたすら寝ていた。寝て、考えた、そして考えないようにしていた。どうするべきか。しかし、その「べき」を考えれば、考えるほど、どんどんからだがにげていく。
 しんどくなるってこういうことなんだ。やっと、きみの気持ちを身をもって知ったよ。
 ぼくは大人だ。だから、それを耐えれるだけでのこころや術をもっている。だが、そんなおとななぼくでさえもつらかったんだ。しんどかったんだ。
 やっと、自分を取り戻せた気がする。しんどさを抱えたままではあるが、また歩く気がわいてきたよ。
 でも、きみはそのしんどさをどう乗り越えていけばよいのか、その見通しさえも、なかなか立たないのかもしれない。糸がきれて、もうつながっていないのかもね。こんがらがって、しまったんだろう。
 ゆっくりするしかない。弱さを肯定するしかない。しかない、という語法さえも、きっときみには凶器になるのかもしれないね。
 ただ、ぼくはきみを肯定する。ただただ、肯定し、そして待ち続ける。裏切りや怒りもあるかもしれない。が、肯定し、待ち続けること、歩みだすことを待つこと、それが一番だと、しんどさを経験したぼくは思うんだ。