原点を歩く

 ゆっくり、昔行った古本屋に行く。ぎっしりと詰まっていた、本棚に隙間があった。やはり、なんだか最初はぎこちなかった。手にとって、本を思い思いに読むと、なんだか、だんだん、あの頃の高揚感が戻ってきた。匂い、床の軋む音、変わっていなかった。あの香り、それがあの頃を思いださせてくれた。文化に飢えながら、なんだか、自分の世界の狭さに苛立ちを感じ、飛び出していきたかったあの頃。そうして飛びだしてみて、10年。そこにいるのは、疲れはて、ふくよかになった自分だった。遠くに来てしまったのか、それはわからない。ただのノスタルジーなのかもしれない。けれども、あの古本屋にあった、文化の香りは変わっていなく、自分の心をあたためてくれた。