期待と他者

 わたしが生きている世界は、主観的な解釈によって成立している。それは、客観的な事実の世界というよりは、意味の世界である。とすると、わたしの生きている世界とあなたの生きている世界にはズレがある。なぜなら、わたしのもつ意味とあなたがもつ意味とは違うからだ。

 このことをふまえていると、ずいぶん生きることが楽になると思われる。というのも、わたしはあなたにある期待をする。こうしてほしい、あるいはこうなってほしいという思いを抱く。しかし、それが期待はずれにおわったとき、失望感を味わってしまう。

 だが、ここでひとつ、わたしの期待が必ずしもあなたの思いと一致しているわけではないということを押さえておくと、少し気持ちが楽になる。もちろん、落胆はするのだけれども、しょうがないかなと気持ちを落ち着かせることができる。わたしは、意味の世界で生きている、そのことが傷付きやすい自分を癒してくれるのだ。

 

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

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