ひらくこと。

 やっぱり、外に出るのはすごくいい。家にじっとこもったりするのは、あんまりよくない。家に閉じこもったりすると、どうもじめじめしてしまう。

 毎日、朝起きて、電車に乗って、大学に通って、授業に出て、友達と会って、世間話をして、家に帰って、課題をやったり、レポートを書いたり、そして時々バイトをする。そういうことを、日々積み重ねていると、日々の単調なリズムで、鬱屈した気持ちになる。

 学生時代って、すごく自由を謳歌する時代って言う。けれど、本当にそうなのかなって、思ったりもする。だって、けっこうルーティンワークなんだもの。だから余計に、単調な日々になってくると、「学生時代とは自由を謳歌するものである」という決まり文句が自分に突き刺さってくる。

 そうして、ときどき気持ちが、ぐっと重たくなる。消耗というコトバが頭の中をぐるぐるとめぐって、心の芯までめぐって、全身がどんどん消耗していく。そういう状態のときの朝は、外に出たくなくなる。彼女も含めて、人に会いたくなくなる。いろんなことが面倒くさくなる。些細なことにいらつく。ふっと余白がほしくなる。

 きっと大人なら、そういう空白の時間を衝動的につくってしまうことは、甘えなのだろうし、許されないことなんだろうなと、罪悪感を持ってしまう。そのことが余計にストレスになって、どんどん悪循環になっていく。

 そんなときは、もうじめじめっとするしかない。というより、じめじめしきることに限る。それが、自分の経験則そして、処方箋。

 じめじめしきったあと、外に出たり、人と会ったりすると、すごく気持ちがからりとする。そうすると、気持ちの湿り気がちょうどよくなってくる。でも、開きすぎると、これまた逆に閉じたくなる。でも、閉じすぎるとなんか開きたくなる。すごく、勝手でわがまま、マイペース。でも、それが自分のバイオリズム。閉じるほどときほどそれを再確認する。だから、今日はひらいている。

 自分の手で、自分の

 一日をつかむ。

 新鮮な一日をつかむんだ。

 長田弘