どんよりとした気分のときに

 というわけで、なんとなく疲れがたまり、胸の辺りがどんよりとして重い。気持ちがものすごく黒い。そのときの思い浮かべるのが坂口安吾の「風と光と二十の私」のこのくだりである。

 彼等はいつも私にこう話しかける。君、不幸にならなければならないぜ。うんと不幸に、ね。そして、苦しむのだ。不幸と苦しみが人間の魂のふるさとなのだから、と。

 だが私は何事によって苦しむべきか知らなかった。私には肉体の欲望も少なかった。苦しむとは、いったい、何が苦しむのだろう。私は不幸を空想した。貧乏、病気、失恋、野心の挫折、老衰、不和、反目、絶望。私は充ち足りているのだ、不幸を手探りしても、もの影すらも捉えることはできない。叱責を怖れる悪童の心のせつなさも、私にとってはなつかしい現実であった。不幸とは何者であろうか。*1

 ホント、不幸って何だろうね???

*1:坂口安吾『風と光と二十の私と』p202